高校生による舞台芸術公演の劇評(レビュー)を募集

第一回グランプリ 受賞作

優秀賞

体感―MIWAの世界

県立船橋高校 2年 高崎麻里亜

 「恐ろしい。」
 それが、『MIWA』を観劇した後、私の中にわいてきた感情でした。今までにもいくつかの公演を観たことがありましたが、このような気持ちになったことは一度もありませんでした。

 正直私はこの公演を観ることに決めた一番の理由は、主役の宮沢りえさんをはじめとして、瑛太さん、井上真央さんなどのテレビでよく見かける方がでていらっしゃって、さらに高校生割引で安く観ることができるからでした。こんな感じで観ることにしたので、『MIWA』というタイトルを聞いても、「ああ、あの美輪さんの話? 金髪でオーラがすごそうな人でしょ? へぇー現実にいる人を題材にするんだー。」くらいの気持ちでした。

 こんな感じだったので、観終わったあとのあのような感情を持つなんて夢にも思いませんでした。私は無知だったのだなと振り返るとそう思えます。

 面白そうだな程度のかるい気持ちを覆したシーンが、長崎に原爆が落ちるシーンでした。ピカッっという光が印象的でした。そして音、演技によってさらにリアルな感じが増して、刺激が強すぎて心が一瞬固まったかのようになりました。原爆について私は授業の中で教科書などで学んでいて原爆がどのようなものだったのか知っているつもりでしたが、このシーンを体感して、原爆は私たちの想像では全くイメージできない恐ろしさを持っていたのではないかと考えさせられました。しかも、今回のはただの劇です。現実ではありません。実際の原爆はもっともっと恐ろしいものであるに違いありません。

 原爆が落ちた後の戦後のシーンでは、あのヨイトマケの唄が出てきました。戦後の厳しい状況から立ち直ろうと頑張ろうというのがひしひしと伝わってきました。こんな時期が日本にあったのかと、唄を聴いていると心が激しく揺さぶられるような感覚がしました。

 ただ「恐ろしい。」と思わせるだけでなく、私はいろいろと考えさせられました。これは良い経験だと思います。戦争がどのようなことをもたらしたのか、私の中でイメージを広げることができたと思います。また、心が動かされるという奇妙な感覚はなんともいえません。

 シリアスな場面がある公演でしたが、笑えるところもたくさんあり、わずかな時間でたくさんの感情になり、自分の感情の移り変わりの激しさに驚きました。

 公演中は、圧倒されっぱなしです。まず、役者さんたちの演技がすごいのです。大量のセリフなはずなのに自然で違和感が全くなく私にとどいてきました。やはり演劇は役者さんあってなので、一流の演技を生で体感できてうれしさがこみあげてきました。そして、役者さんを支える音響や視覚効果には特に原爆の落ちる場面で、迫力やリアリティーを感じさせられました。ストーリーも私のような無知な高校生でも楽しめるもので、どうしてこんなに伝える力があるのだろうか、と不思議でたまりません。美輪さんについて知ることができ、人間って面白い、この世界にはいろんな人がいる、一人でも多くの人のことを知りたいなと思いました。

 演劇は体感できることが一番の長所だと改めて思いました。テレビでは体感はできません。テレビではどうしても客観的になってしまいますが、演劇では主観的になることができます。一種のアトラクションなのです。体感したことは忘れることはないでしょう。今回の『MIWA』を観たことは私の人生にこれからも影響を与えてくれるでしょう。たくさんのことを知り考えることで自分の世界が広まったことを嬉しく思います。

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