高校生による舞台芸術公演の劇評(レビュー)を募集

演劇の劇評

山口宏子(朝日新聞論説委員)
(12月26日 『ロンドン版 ショーシャンクの空に』観劇&レクチャーより)


 劇評は、作品の中で何が起き、その出来事をどう受け止めたのか、自分の感情がどう動いたのか、そして、それがどういう意味を持つかを、論理的に、他の人が読んでわかるように書くことが大切です。このことを意識すると、感想文ではなく劇評らしくなります。
 劇評を書くことは試験ではありません。何が正解とか、どう書くのが正しいかはありません。自由に大らかに書いて欲しいと思います。

●記録的要素

 劇評には記録としての責任が伴いますので、観劇日時、会場のほか、劇作家、演出家、出演者や、美術、音楽、衣装など作品を構成する要素を押さえ、できるだけ本文にも明記します。

●評論とは

 感じたこと、考えたことに言葉によって形を与えること、言葉として定着させていくことが評論だと考えます。すなわち、作品を観て自分の中にわき起こった感情や作品のイメージを自分なりに表現する言葉を見つけ出し、肉付けをして構成していくのが劇評です。

●入り口から全体像へ

 舞台を観て自分の心が動く入口は、たくさんあります。例えば、衣装に関心がある、でもいいし、興味のある俳優が出演している、でもいい。演技について考えることが、作品を考えるきっかけ=入口になることもよくあります。ただし、劇評は、単なる感想だけにならないように気をつけます。
 また、そういう一点から考え始めた場合でも、全体を見渡せるような劇評を書くように心がけましょう。例えば、劇評を建物だとすると、キッチンについて書くだけでは、読む人に伝わりにくい。他の部分がどういう構造になっているか書くことで、建物全体を表現することが出来ます。舞台を構成しているたくさんの要素のすべてを網羅する必要はありませんが、俳優の演技についてはできるだけ言及するのがよいでしょう。

●作品鑑賞の視点

 作品を創るにあたり、作家や演出家、俳優たちはそれぞれ必死で、どんな作品にしたらよいか、色々なことを考えて作っています。敬意を持って、そのひとつひとつの工夫を見てほしい。特に舞台の場合は、映画のように視点が切り取られているわけではないので、どこを見るかの自由は観客に委ねられています。
 『ロンドン版 ショーシャンクの空に』では、多くの観客が、レッドの視点で物語を見るでしょう。しかし、別の人物、例えば、名前も言われない登場人物の目には、レッドや他の人物がどう映るだろうかということを考えるのもおもしろいことです。登場人物全員に、たとえ語られなくてもそれぞれの人生があります。少し引いて周辺的な登場人物の視点から見てみると、また違った見方ができます。演劇は人間を見る芸術なので、色々な人物に注目してみる見方も大切です。

●舞台版『ショーシャンクの空に』

 スティーブン・キング原作の小説や映画版もあるので、見比べると、劇評を書く参考になります。時間とお金に余裕があれば、是非見てください。映画版は有名な作品ですが、原作にはないシーンが追加されています。今回の舞台版は、映画版よりも原作の小説に近い構造になっています。別のバージョンも鑑賞してみることは、評論に向き合うにあたり良い姿勢だと思います。
 その場合、映画と舞台の違いを指摘するだけでなく、その違いから自分がどう感じたかを書くことが大切です。

●多くの人たちの考え方と自分の考え方が違ったら

 例えば、周囲の観客が泣いていたシーンで自分は泣かなかったとしても、「間違った見方をした」などとは思わないでください。ある場面で多くの人が泣いていたのならば、そのことに触れ、その時、自分はどう感じていたのかを、劇評を読んだ人にきちんと伝えるように書けばいいのです。演劇はライブなので、舞台と観客、あるいは観客同士の間に感情の同調がおきやすいですが、自分が同調した場合でも、同調しなかった場合でも、他の人の反応と自分が感じたことを、客観的に記録し、何故そう感じたのかを考えて書けば、説得力があるでしょう。

レクチャーの様子

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